パン作りに欠かせないドライイーストですが、1回の使用量はごくわずか。
気が付かないうちに3年~5年前の日付になっていたという賞味期限切れの経験をした人も多いのではないでしょうか。
ドライイーストの賞味期限をはじめ、未開封でも腐ることがあるのか、5年前の古い賞味期限切れドライイーストは体に悪いのか、冷凍と冷蔵での適切な保存方法などについて調査してみました。
ドライイーストとは
パンを作る際に必要不可欠なドライイーストは、1回の使用量はごくわずかながら、パンのふくらみや風味、香りを出す重要な役割を担っています。
ドライイーストとは、イースト菌(酵母菌)という生き物を乾燥させて休眠状態にし、顆粒状にしたもの。
イースト(酵母)は自然界に数多く存在する微生物のことで、糖分をアルコールに変える働きをもっています。
発酵時に発生する炭酸ガスとアルコールが生地をふくらませることで、ふっくらとおいしいパンが出来上がるというわけです。
イーストの種類
イーストは、含んでいる水分量によって分けられます。
それぞれの特徴や使い方を見てみましょう。
イーストの種類 | |||
種類 | 水分量 | 流通形態 | 使い方 |
生イースト | 70% | 冷蔵 | 水で溶いてから使う |
ドライイースト | 7~8% | 常温 | ドライイーストの5~6倍量のお湯(約40℃)に溶き10~15分予備発酵させてから使う |
インスタントドライイースト | 4~5% | 常温 | 粉に混ぜるだけ |
このように見てみると、日常私たちが使うことの多いドライイーストは、一般的に「インスタントドライイースト」に該当しているようです。
インスタントドライイーストの特徴
インスタントドライイーストの特徴としては、次のようなものがあります。
- 顆粒状
- 予備発酵不要
- 発酵力が強い(使用量は生イーストの約3分の1)
- 粉に混ぜるだけのお手軽さ
パン屋などで使われている生イーストにくらべると、ドライイーストはホームベーカリーを気軽に楽しみたい人向けの特徴がそろっていることがわかります。
ドライイーストの賞味期限(未開封)
ドライイーストは生イーストにくらべて保存性が高く、使い方も簡単なため、家庭でもよく使われています。
未開封の場合、ドライイーストの賞味期限はどのくらいなのでしょうか。
市販のドライイーストのパッケージに記載されている賞味期限を調べてみました。
未開封の場合の賞味期限 | |
商品名 | 賞味期限 |
スーパーカメリヤドライイースト | 製造より12ヵ月 |
アリサン ドライイースト | 18ヵ月 |
サフ 赤 インスタントドライイースト | 製造より24ヵ月 |
サフ 青 インスタントドライイースト | |
サフ 赤 セミドライイースト | |
ホシノ天然酵母パン種 | 365日 |
白神こだま酵母(ドライ) | 製造より547日 |
メーカーによってちがいはあるものの、1~2年の賞味期限が一般的なようです。
ただし、賞味期限は「製造から」の期間であるため、実際に購入する時にはすでにある程度の時間が経過している可能性があります。
購入時には、その点も考慮してパッケージの賞味期限を確認するようにしましょう。
ドライイーストの賞味期限(開封後)
では、開封後の賞味期限についてはどうでしょうか。
そのまま何もしない状態で保存した場合、ドライイーストは1ヵ月程度しかもちません。
ドライイーストに含まれるイースト菌が、酸素にふれることで酸化してしまい、発酵力が失われてしまうからです。
適切な方法で保存していれば、開封後でも半年~1年近く、イースト菌の発酵力を維持することができます。
5年前の賞味期限切れドライイーストはまだ使える?
ドライイーストは、肉や魚、野菜などのように賞味期限切れしても見た目が大きく変化するものではないため、使えるかどうかの見極めが難しいといえます。
例えば、5年前の古い賞味期限切れのドライイーストが出てきたとしましょう。
ドライイーストは通常、真空パックの状態で販売されていることが多く、未開封の場合は腐るということはありません。
また、賞味期限はもともと多少の余裕をもって設定されているため、賞味期限切れだからといってすぐに食べられなくなるということもありません。
賞味期限の1.2~1.5倍の期間は、問題なく使うことができるでしょう。
しかし、イースト菌は温度・水・湿度にとても敏感で、状況によっては発酵力が低下し、パンがふくらまない場合もあります。
賞味期限切れや開封後に長時間放置してしまった時などには、ドライイーストがまだ使えるのかどうかを次のような手順でチェックしてみましょう。
ドライイーストがまだ使えるのかチェックする方法
【用意するもの】
- ぬるま湯 約100ml(夏場25℃、冬場30℃くらい)
- 砂糖 小さじ1
- ドライイースト 小さじ1
すべての材料を容器に入れ、常温で10分程度放置すると泡が立ちはじめます。
その泡の状態でドライイーストの状態を見極めることができます。
写真のようにイーストがぶくぶくと泡立っていたらOK。
発酵力があり、パンをふくらませることができます。
泡立ちが悪い場合は、発酵力が弱まってしまっているのでパンはふくらみにくいということになります。
例に出した5年前の賞味期限切れドライイーストも、この方法でテストしてみた結果次第では使うことは可能だといえます。
ちなみに、ドライイーストは食用以外には使用できません。
重曹のように「掃除に使える」といったこともないので、発酵力がなくなって捨てる場合には燃やすごみとして処分するようにしましょう。
古いドライイーストは体に悪い?
ドライイーストの賞味期限が5年前でもそうでなくても、カビが生えたり虫がわいていたりする場合は、体に悪い影響を及ぼします。
ドライイーストの安全性については、開封状態や保存状態による影響が大きく、成分が生きた菌であることからも慎重に判断するようにしましょう。
また、一部では「天然酵母にくらべてドライイーストは体に悪い」という説があるようです。
パン屋でよく目にする「天然酵母」はイースト菌とどうちがうのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。
どちらも酵母ではあるのですが、次のようなちがいがあります。
イースト菌:酵母を人工的に培養したもの
天然酵母:自然の力で培養したもの、さまざまな微生物や素材が含まれている
「人工的」という言葉のイメージから、「科学的に作り出された食品添加物」だと誤解している人が多いようです。
イースト菌は、パン作りに適した微生物を純粋培養したものなので、体に悪いということはありません。
ドライイーストの保存方法
ドライイーストは生イーストにくらべると保存性は高いですが、それでも開封後は早めに使い切るか、小分けに密閉するなど工夫した上で冷蔵庫に保存するのがいいでしょう。
未開封の場合
真空パックされている状態が一般的なので、常温保存が可能です。
高温多湿を避け、パントリーなどの冷暗所に保存するようにしましょう。
開封後の場合
使い残したドライイーストは、袋の口を折り曲げ、テープなどで密閉した上で冷蔵庫に保管します。
湿度によって発生するガスや酸化による劣化で、徐々に発酵力は弱まっていくため、なるべく早めに使うほうがいいでしょう。
冷凍保存も可能ですが、冷蔵保存の場合よりも外気との気温差が激しく、温度変化による結露が起こりやすいです。
使う分量ごとに小分けにしておくなど結露防止の工夫次第では、日持ちしやすくなります。
冷凍保存したドライイーストは発酵しにくいため、使う際には常温に戻してから使うようにしましょう。